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聴覚の未来を作る技術で聞こえを届ける

【FILLTUNE株式会社 磯部 純一】

今回は、第12回TIB PITCH SHOPコースとTIB PITCH Boostに採択され、SusHi Tech Tokyo 2026にもご出展いただいた、FILLTUNE株式会社の磯部 純一さんにお話を伺いました!

 

磯部 純一 氏
FILLTUNE株式会社 代表取締役
事業概要:
超磁歪(ちょうじわい)素子を活用し、難聴のある方に“聞こえ”を届ける聴覚支援デバイスを開発。会話の聞き取り支援に加え、音楽を楽しむ体験の回復にも取り組み、医療・介護現場から個人利用まで幅広いシーンでの活用を進めている。
プロフィール:
前職では骨伝導分野のプロダクト事業に携わり、難聴者向け製品の開発・販売にも従事。その中で、中度~高度難聴の方に十分な“言葉の聞き取り”を届ける難しさを痛感する。そこで出会った超磁歪素子の技術に可能性を見出し、FILLTUNE株式会社を創業。

 

 

 

https://filltune.com/

まず、会社を立ち上げた背景について教えてください。

前職では、骨伝導技術を活用した“聞こえ”のプロダクトに長く携わってきました。健聴者向け製品だけでなく、難聴のある方向けの製品開発も進めていたのですが、軽度難聴の方には一定の手応えがあった一方で、中度~高度難聴の方に対しては、音は感じられても言葉としては聞き取れない、というケースが多くありました。

たとえば、音楽なら曲の雰囲気は分かっても歌詞が聞き取れない。会話でも音は入ってくるけれど、何を言っているのか分からない。そうした現実を目の当たりにして、この領域にはまだ解決できていない課題が大きく残っていると感じたんです。

そんな中で出会ったのが、現在FILLTUNEで扱っている超磁歪素子の技術でした。これは、高度難聴の方にも“言葉を届けられる”可能性を示すエビデンスがあり、この技術をこのまま終わらせるのはもったいない、という思いが強くなり自分で会社を立ち上げて取り組むことを決めました。

a.tell(アテル)

ーa.tell(アテル)はどのようなプロダクトなのでしょうか?

a.tell(アテル)は、創業後に立ち上げたヘッドホン型の聴覚支援デバイスを実際に使ってくださっていた医師の方々から、「診察の時だけ聴診器のようにあてて使えるものがあるといい」という要望を複数いただいたことをきっかけに開発しました。加齢性難聴の方との対話において、ただ“聞こえる”だけでなく、“しっかり聞き取れる”ようにすることで、医療や介護の現場での対話の質を高め、より豊かなコミュニケーションを実現するとともに、医師・看護師・介護士の皆さんの業務負担を軽くできるというものになります。

直近では、金融機関での導入が決まるなど、医療・介護以外の領域にも活用が広がってきています。窓口や個室での対話のように、聞き間違いが許されない場面で評価いただけているのは、嬉しく思っています。

ーTIB PITCH 第12回 SHOPコースに応募された背景を教えてください。

当時の私たちは、医療商社や卸のパートナーを通じて間接的に商品を届ける形が中心でした。

だからこそ、直接ユーザーのリアルな反応に触れられる場を持ちたいという思いがありました。TIB PITCHについては、有楽町という立地も含めて、企業の方、メディアの方、新しいプロダクトを探している方に見つけてもらえる可能性が高い場だと感じ、応募を決めました。

SusHi Tech Tokyo 2026の出展時の様子

ーTIB PITCHや出展を通じて、期待していたことや課題にはどのような変化がありましたか?

一番は、直接つながれる相手が増えたことです。TIBでの露出をきっかけに医師の方などと直接接点を持てる先が増えたことで、実際のユーザーの反応や活用シーンを継続的にヒアリングできるようになったのは非常に大きかったです。

ーTIB PITCH Boostで採択され、SusHi Tech Tokyo 2026に出展されてみて、率直な感想や気づきはありましたか?

私たちの製品は、しっかり説明したり、体験していただいたりして初めて価値が伝わるところがあるためその場でファンドの方や事業会社の方などに「面白いですね」と興味を持っていただけたのはよかったです。新たな接点があった良い場であったと思います。

また、高齢の親御さんを持つ方や、ご家族の聞こえに課題を感じている方と直接お話しする機会がありました。そこで実感したのは、難聴の課題に最初に気づくのは、本人よりも周囲のご家族であることが多いという点です。

今後、個人向けに広げていくには、40代~60代くらいの“親の聞こえ”を気にし始める世代に、どう届けていくかが重要だと改めて感じました。

a.tell(アテル)の使用イメージ

今後の挑戦や将来の展望について教えてください。

まず大前提として、私たちは今後も“聞こえを届ける”ことにしっかり向き合っていきます。その上で、超磁歪素子が生み出す微細な振動には、聞こえ以外の可能性もあるのではないかと考えています。

現在は、公的研究機関との共同研究を進めており、この微振動が脳血流にどのような影響を与えるかを検証しています。聞こえの先にある新たな応用可能性を、研究機関とともに丁寧に確かめていきたいと思っています。

最後に、TIB PITCHへの応募や出展を検討している方へメッセージをお願いします。

TIBだからこそ生まれる偶然の出会いや、思いがけない接点が確かにあると感じました。スタートアップにとっては、ちょっとした出会いやきっかけが次の展開につながることが本当に多いと思います。運の要素もあるかもしれませんが、そもそもそこに出していなければ、その運をつかむこともできません。

自分たちで有楽町に拠点を持つのは簡単ではありませんし、だからこそTIBのような場でプロダクトを見つけてもらえる価値は大きいと思います。新しい出会いを求めている方には、挑戦する価値がある場だと思います。