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テレプレゼンスシステム「窓」で、“人と人が自然に会える体験”を提供する

【MUSVI株式会社 阪井 祐介】

今回は、第10回 TIB PITCH 試験導入コースとTIB PITCH Boostに採択され、SusHi Tech Tokyo 2026にもご出展いただいた、MUSVI株式会社の阪井祐介さんにお話を伺いました!

 

阪井 祐介 氏
MUSVI株式会社 代表取締役 / Founder & CEO

事業概要:
距離を超えて人とリアルに“会える” どこでも「窓」を提供。距離の制約を超えて、“あたかも同じ空間にいるような自然なコミュニケーション”を実現し、新しい“会う”を提供するテレプレゼンスシステム。建設や医療・介護、オフィスなど国内外で800台を超える導入実績を持つ。

プロフィール:
通信工学を学んだ後、大手電機メーカーで高臨場感通信・インタラクションデザイン・認知心理学に関わる研究開発に長年従事。学生時代から抱いていた「人と世界をつなぐ窓をつくりたい」という構想を起点に、長年培ってきた技術・知見をもとに独立。2022年にMUSVI株式会社を創業し、“リアルに会う感覚”を遠隔で再現する基盤づくりに挑戦している。

 

https://musvi.jp/

 

ーまず、MUSVIを立ち上げた背景について教えてください。

学生時代、バックパックで海外を巡る旅をしており、人の温かさや食べ物、風景といった偶発的な体験に強く惹かれていました。一方で通信工学を専攻し、デジタル通信の研究をする中で、「技術やデータだけで人は幸せになるのか」という問いを抱えていました。

その後、大企業で研究開発に携わり、「人と世界をつなぐ窓」をつくりたいという構想のもと、長年技術やプロトタイプ開発を重ねてきましたが、社会実装には越えられない壁を感じました。

最終的には、所属企業などからの後押しもあり、MUSVIを立ち上げました。長年の構想を事業として形にし始めたという感覚です。

テレプレゼンスシステム「窓」

ーMUSVIが提供する「窓」は、どのようなプロダクトなのでしょうか?

ひと言でいえば、“人と会う感覚”を遠隔で実現するためのプロダクトです。

一般的なオンライン会議は、確かに距離を超えて話せる便利さがあります。ただ、実際には「話せる」と「会っている」はかなり違いますよね。画面越しに情報交換はできても、その場の空気や相手の気配、一緒にそこにいる感じまでは届きにくい。MUSVIは、そこに正面から向き合っています。

私たちがずっと研究してきたのは、人が人をどう認識しているか、空間をどう感じているかということです。映像や音声をただ高精細にするのではなく、「そこに人がいる」「本当に会っている」と感じられる状態をどうつくるか。そのために、映像・音響・通信・空間設計・認知的な工夫を一体で設計しています。

「窓」は単なるディスプレイでも、ビデオ会議端末でもありません。距離を超えて空間と空間をつなぎ、人と人の関係性そのものを立ち上げる装置だと思っています。

ー現在はどのような場面で活用が広がっているのでしょうか?

今、導入が進んでいる代表的な領域のひとつが建設現場です。大規模工事の現場では、ちょっとした打ち合わせのために現場間を移動するだけでも大きな時間と手間がかかります。そうした環境で「窓」を使うと、単なる会議ではなく、その場にいる感覚で細かい確認や連携がしやすくなり、業務効率や意思疎通の質が大きく変わります。

また、医療・介護の現場でも活用が広がっています。離島の病院と介護施設をつなぎ、遠隔で診療や相談を行うことで、移送負担や夜間対応の負荷を減らせるケースも出てきました。

さらに、教育分野でも可能性を感じています。探究学習のように、正解を教えるのではなく、人と出会い、自分で問いを深める学びでは、「窓」との相性がとても良いんです。学校の中だけでは出会えない人や地域、知見とつながることで、子どもたちの目の輝きが変わる瞬間があります。

距離や場所の制約が大きい現場ほど、価値が明確になってきていますね。

ー第10回 TIB PITCH 試験導入コースに応募されたきっかけを教えてください。

応募のきっかけは、入居していた支援施設を通じたご紹介でした。

当時はちょうど、資金調達を一区切り終えて、次の成長フェーズに向かおうとしていた時期でした。採用も進めながら、「ここからいよいよ事業を伸ばしていくぞ」というタイミングだったと思います。

以前からTIBの存在は知っていて、「あの場所に『窓』が入ったら絶対に面白い」という話は社内外でも出ていたので、試験導入という形でチャレンジできるのはとてもありがたい機会だと感じました。

ー実際にTIBで試験導入して、どんな反応や手応えがありましたか?

一番印象に残っているのは、TIBに来る方々の感度の高さです。

私たちは「窓」をTIBに置きながら、別拠点とつないで運用していたのですが、最初はただのサイネージやディスプレイだと思って見ていた方が、こちらから声をかけるととても驚いてくれるんです。このように初めて私たちが届けたい価値が体験として伝わる。その流れがとてもよかったですね。

しかもTIBは、スタートアップや新しい価値に対して理解のある方だけでなく、自発的に動いている方、何かを始めようとしている方が本当に多い。だから「面白いですね」で終わらず、紹介や商談、次の展開につながっていくスピード感がありました。

実際に、TIBでの試験導入をきっかけに商談につながったり、自治体との接点が生まれたりもしました。自分たちが長く信じてきた価値が、ちゃんと伝わる場所なのだと確認できたことは、大きな自信になりました。

SusHi Tech Tokyo 2026出展の様子

ーTIB PITCH Boostで採択され、SusHi Tech Tokyo 2026にもご出展いただきましたが、こちらはいかがでしたか?

SusHi Tech Tokyo 2026は、TIBでの試験導入とはまた違った意味でよい機会で、認知の広がりという点では大きな意味がありました。

来場者の幅がとても広く、国内外の方や、未来の都市・テクノロジーに関心のある方など、多様な方に見ていただけたのはよかったです。SusHi Tech Tokyo 2026の会場である東京ビッグサイトからTIBをつなぐデモンストレーションを通じて、具体的な活用イメージを持っていただけたのも大きかったです。

「窓」の活用イメージ

ー今後、MUSVIとして挑戦したいことや将来の展望を教えてください。

まずは、すでに導入が進んでいる建設、医療・介護、教育、交通・空港などの領域で、しっかり成果を積み重ねながら横展開していくことが大きなテーマです。特に教育は、探究学習や地域連携の文脈で、「窓」が子どもたちの学びや出会いを広げるインフラになれる可能性を感じています。離島や地域格差のある環境こそ、大きな意義があると思っています。

人が簡単には行けない場所、人と人の断絶が大きい場所にこそ、この技術の意味があると信じています。

ー最後に、TIB PITCHへの応募を考えている方へメッセージをお願いします。

TIBに向いているのは、何かが完璧に整っている人というより、「どうやって実現すればいいか分からないけれど、どうしてもこれをやりたい」と思っている人なんじゃないかと思います。

もちろん事業としての整理や準備は大事です。ただ、それ以上に、自分の中の本当の思いなのか、自分は何を社会に問いかけたいのかがすごく大事だと思っています。TIBは、そういう主体性や熱量にちゃんと向き合ってくれる場所でした。

たとえまだ未完成でも、足りないものがあっても、そこで終わるのではなく、「ここを伸ばしたらもっとよくなる」「この可能性は別の場所にも広がるかもしれない」と、次の一歩を前向きに見せてくれる。そういう温かさのある場だと感じています。

だからこそ、強い思いを持って挑戦したい人には、ぜひ一度チャレンジしてみてほしいですね。