「おいしい」も「健康」もあきらめない世界の実現
【トイメディカル株式会社 村田 将基/谷口 望】
今回は、第12回 TIB PITCH SHOPコースとTIB PITCH Boostに採択され、SusHi Tech Tokyo 2026にも出展されましたトイメディカル株式会社の村田 将基さん、谷口 望さんにお話を伺いました。
事業概要:
海藻由来の成分で食事中の塩分を吸収されにくい成分に変換する特許技術「塩分オフセット」技術を持つ。海藻由来のアルギン酸類を食事と同時に摂取することで胃の中で消化吸収が始まる前に塩分を吸収されにくい成分に変換することで、食事自体の味付けを変えることなく塩分の吸収量を抑える手法。実際に腎クリニックでも多数採用されており、全国の調剤薬局・ドラッグストアを中心に展開している。
プロフィール:
村田 将基 氏 医療・介護領域向け商材を扱う業界での経験を経て、トイメディカルに参画。現在は、塩分オフセット技術を活かした商品展開や販路開拓に取り組んでいる。
谷口 望 氏 異業界から参画し、展示会や海外展開も含めた新たな接点づくりに挑戦している。

ーまず、「塩分オフセット」技術が生まれた背景について教えてください。
もともとトイメディカルは、透析治療の際に体へ管を固定するための「剥がしても痛くないテープ」を開発する会社として立ち上がりました。創業は2013年で、医療現場の中でもかなりニッチな課題に向き合うところからスタートしています。
その後、2015年に代表のご友人が透析治療を受けることになり、「治療自体も大変だけれど、特につらいのは食事制限、とりわけ塩分制限だ」と話されたそうです。
そんな中で、「地元の熊本ラーメンをもう一度おいしく食べたい」という声があったことをきっかけに、食の楽しみをなるべく我慢せずに済む方法はないか、という研究開発が始まりました。そこから生まれたのが、現在の「塩分オフセット」技術です。
ー現在展開されている「塩分オフセット」とは、どのような技術なのでしょうか?
トイメディカルの「塩分オフセット」は、海藻由来の天然成分であるアルギン酸類を使い、食事と一緒に摂取することで塩分吸収にアプローチする技術です。
従来の減塩は、基本的には「入れる塩の量を減らす」考え方が中心でした。実際、日本でも長い時間をかけて減塩が進んできましたが、ここ10年ほどは摂取量が横ばいになっていて減塩の限界が見えてきています。
最近では、カリウムを多く摂ってナトリウムの排出を促す方法も広がっていますが、透析治療中の方にとってはカリウム自体を制限しなければならない場合もあります。その点、トイメディカルの技術は、単純に塩を減らすのでも、排出を促すのでもなく、吸収を抑えるというアプローチを取っているのが大きな違いです。

「塩分オフセット」技術を活用した商品群
ー現在はどのような商品を展開されているのですか?
現在は主に、サプリメント、調味料シリーズ、おせんべいの3つを展開しています。
また、直近では味千ラーメンとコラボした「塩分オフセット麺」もスタートしており、ラーメン本来の味を損なわずに塩分コントロールを実現した新しいラーメンを店舗で食べられるようになっています。
ーTIB SHOPへの出店には、どんな狙いがあったのでしょうか?
TIB SHOPへの出店には、大きく2つの目的がありました。
ひとつは、新しく出した食品商品のリアルな反応を見たいということ。もともと流通していたのは主にサプリメントで、食品としての展開はまだ始まったばかりでした。特に「気にせんべい」は、技術を知ってもらうための商品でもあったため、市場でどう受け止められるのかを確かめたかったところがあります。
もうひとつは、問屋や取引先へ提案する際の販売実績を得ることです。そうした意味で、TIB SHOPはテストマーケティングの場として非常に魅力的でした。
ー実際に出店して、どのような手応えがありましたか?
消費者のニーズに合致し、よく売れることが分かったことです。出店期間中、「気にせんべい」は1カ月で約180個売れるなど、かなり良い反応がありました。TIB SHOPのスタッフの方からも「手に取られやすく、売れやすい商品だった」という声があったと聞いています。
また、“塩分オフセット”と減塩の違いについては、店頭で丁寧に説明するとしっかり理解してもらえることもわかりました。つまり、商品力はある一方で、伝え方が非常に重要だということです。これは今後の販促や売り場設計にもつながる、大きな学びになったと思います。
ーTIB SHOPでの出店を通じて、販促以外の成果もありましたか?
ネットワーキング面での成果もありました。
TIBには本当に多様な方が来られるので、BtoCの反応を見るだけでなく、企業や自治体とのつながりも生まれました。たとえば、保険会社とのつながりから、「気にせんべい」がアンケート回答のノベルティに使われたり、熊本の健康施策に関連するイベントへ出店する流れが生まれたりと、思わぬ形で広がりが出ています。

SusHi Tech Tokyo 2026出展時の様子
ーTIB PITCH Boostで採択されご出展いただいたSusHi Tech Tokyo 2026では、どのような反響がありましたか?
SusHi Tech Tokyo 2026では、まずトイメディカルのことを初めて知る方に直接説明できたことが大きかったです。
会場では、ポスターを見て「これは何?」と立ち寄ってくださる方が多く、商品を試していただきながら説明することで、「こんな技術があるんだ」と素直に驚いてもらえる場面が多かったです。
また、事業会社や、自治体との新たな相談、食関連イベントへの登壇・出展機会にもつながっており、3日間の出展が次の商談や地域連携の入口になったことが一番の収穫でした。
「塩分オフセット」のマーク
ー今後の展望について教えてください。
今後の大きな方向性は、自社商品を売る会社にとどまらず、“原料・技術を提供する側”として食のインフラをつくっていくことです。
すでに味千ラーメンとのコラボのように、BtoBで技術を組み込んだ商品・メニューの展開が始まっていますが、ここからさらに食品メーカーや外食企業との協業を広げ、「塩分を気にして本当に食べたいものを諦めている人」に届けられるように頑張っていきたいと思っています。
そのためには、“塩分オフセット”という考え方そのものを社会に広げていくことが重要であることから、市場にわかりやすく認識してもらう活動にも力を入れていきたいと思っています。
ー最後に、TIB PITCHやTIB SHOPへの参加を検討している方へメッセージをお願いします。
絶対に出た方がいいです。理由は、TIBの価値が出店している間だけで終わらないからです。出店後もイベントの紹介を受けたり、困りごとを相談すると「こういう企業とつながれますよ」と橋渡しをしてもらえたりと、継続的にフォローされている実感があります。
単なる販売機会や展示の場ではなく、情報も人も集まるハブとして、事業を進める上での軸足のひとつになる。そういう意味で、これから挑戦する企業にとって非常に価値のある場所だと感じています。

